既存不適格物件とは一体どんなもの?

access_time2017年7月4日 更新

違法建築!?既存不適格物件とは何か?

違法建築!?既存不適格物件とは何か?

昔のドラマで主人公家族が自分たちで家を建て、大自然と共生しながら自活していくという話がありましたが、皆さんの中にも子供の頃廃材などを見繕って秘密基地作りに励んだ記憶がある方もいらっしゃるかもしれませんね。ドラマの中では大自然でしたしフィクションですので特に問題は起きませんでしたが、私たちが住む現実の世界では建物を建てる際には多くのルールを守らなければなりません。

例えば一定の広さの土地があるとして、自分の土地だからとそこに物理的に可能なあらゆる建築物が建てられるかといえばそうではないのです。それは建物の倒壊などを考えた安全面の理由だけでなく、周辺の土地や建物の所有者との権利の兼ね合いなどの理由もあります。完全に自由な建築を認めてしまうと安全性の欠如や他者の権利との衝突など不都合が生じるので、法令によって多くの規制がかけられているのが現状です。

その法令に照らして適合していない物件の中には「既存不適格物件」と呼ばれるものがあります。

不動産の購入に際してこの名前を聞くことがあるかもしれませんので、今回はこの物件について解説します。

既存不適格物件って一体どんなもの?

ほとんどの方は聞いたことがない言葉だと思いますが、この単語の漢字からある程度の意味を推察することができるかもしれません。

既存=すでに存在している

不適格物件=法令に照らして不適格な物件

分解するとこのような意味が推察できますね。

これは一体どういうことかというと、冒頭で述べたように国はこれまで色々な理由から法令によって建築に関して制限をかけてきました。

規制をかけることになった理由は様々ですが、安全性が担保できなかったために人命に被害が及んだ、人間にとって大切な良好な日当たりが誰かの建築物のせいで得られなくなってしまったなど色々です。こうした規制法令は、具体的な問題が生じてからやっと国が腰を上げて作ります。

しかしながら私たち(父母、祖父母やご先祖様も含めて)の中には、そのような規制ができる前から建物を建てて生活している人もいます。規制法令ができる前に立てられた建物がその法令に違反することになったら、その建物は取り壊しになるのでしょうか?

そのようなことになったら日本全国で不動産の多大な損失が発生してしまい、国民生活に大きな影響が出る上に、国策としても妥当とは言えないでしょう。

そのためすぐに取り壊しなどということはないのですが、現状の法令には適合していないという状態になってしまうので、既存不適格物件は増改築などの際に規制が適用されるため不動産としての活用に制限がかかってしまう点で要注意物件である、ということを覚えておきましょう。

どんな理由で不適格になってしまうのか?

では具体的にどんな理由で既存不適格物件となってしまうのでしょうか?

例えば、昔は建物の規模についてはその高さによって制限をかけていました。これを容積率という概念で規制することになり、旧来からあった建物の一部はこの規制に引っ掛かり既存不適格物件となってしまいました。

また高い建物が増えてきたことからその周辺の家で日当たりが悪くなり、日照権の侵害を訴えるトラブルが多発したことから日影規制が導入され、これにも旧来からある高い建築物の一部が引っかかり既存不適格物件となってしまいました。安全面では建築基準法の耐震基準が改正されたことにより、やはり旧来からの建物の一部はこれに適合しなくなり不適格となってしまいました。

このように、時代の要請によって新たに作られるルールについていけなくなった物件がその都度「既存不適格物件」となっていったのです。

違法建築物とは違うの?

法令に適合しないという意味では既存不適格物件は違法建築として見られてしまいがちです。

しかし、現実には違法建築物とは全く異なる物件として扱われます。既存不適格物件はそもそも建築当初には何ら法令に違反していません。何も悪いことをしていないのです。

少し話がそれますが、日本の刑法には刑罰不遡及の原則というものがあります。

ある行為が実行された当時には違法でなかったものが、その後にできた法律によって犯罪とされたとしても、その行為を遡って罰することはできないという法の原理をいいます。

不動産の法令と刑法では性格が異なりますが、そのようなイメージです。

新たな法令ができたら、それ以後の新築物件については規制されますが、旧来の物件はお咎めなしということです。(ただし増改築などの際に当該法令による制限はかかります)

対して違法建築というのは、すでに規制する法令があるのにも関わらずそれを無視して、規制に違反して建てられたような物件をいいます。これには、それまでただの既存不適格物件だったものが、新たに設けられた規制法令に従わずに増改築を行うような場合も含まれます。

既存不適格物件は何もしなければお咎めは来ないけれども、下手に増改築をしてしまうと違法建築になってしまうこともあるということです。

既存不適格物件部にメリットがある!?

現状ではお咎めなしでも将来に向けて規制が強要されるなど、不都合を被ることになる既存不適格物件は一見するとメリットなどないようにも思えます。

しかし立場や見方を変えると一部でメリットを享受できることもあります。

将来に向かって規制がかかるため増改築などで制限が付く物件は市場取引の場面で高値で売ることが難しくなります。ということは、転売を目的とせず、その街や今あるその建物が気に入りずっと住むというのであれば、好みの物件を安く買うことができるということです。

規制のおかげで周りに高い建築物が建ちにくいので静かで落ち着いた環境が好きな方には好都合かもしれません。

また投資物件として購入し、他人に貸して収益を得ることもできます。通常よりも安く購入できるので初期費用が抑えられ、建物の寿命が来たら更地にして転売したり、規制にかからない範囲で新築したりといった不動産利用が可能になります。

このように見方を変えると意外なメリットも見えてくるのが面白いところです。

ではデメリットは?

それでもやはり規制の為に利用価値が下がってしまうことも多いので、デメリットについては改めて理解しておく必要があります。

まずお伝えしてきたように新たな規制に違反する増改築ができないので、現状で決められている容積率を超えた規模の増築は行えませんし、日影規制の為周辺の家屋の日照権を侵害する増改築もできません。

そのため増改築の際に希望する高さが実現できなかったり、日当たりの確保のために上層の一部を不整形にしなければならないなどの不利益が生じることがあります。新耐震基準も満たさなければならないので、費用面で出費が増える可能性もあります。

また、このような不動産自体のデメリットだけでなく融資の面でも影響が出ます。家の購入に住宅ローンを利用する方が多いと思いますが、金融機関は購入する不動産を担保にとって融資の可否を判断します。

そのためその物件の担保としての価値が低ければ融資をしてくれないこともあります。万一の時には換価して弁済に充てる必要があるからです。

上述の通り市場取引ではどうしても高額とはならないので市場価値が低い=担保性能が低いと判断されて融資を断られてしまうこともあるのです。

購入に際してはメリットとデメリットを見て、自分の場合はどちらが前面に出て来るかを判断して購入を検討する必要があります。



関連記事

あなたにオススメ

menu