建築コストの高騰とマンション価格の関係とは

access_time2017年7月25日 更新

建築コストの高騰はマンションの取引にどう関係する?

建築コストの高騰はマンションの取引にどう関係する?

数年前からテレビなどの報道で建築費が急騰しているというニュースが聞かれるようになりました。建築業界では報道がされる前から懸念されていたことですが、一般の方が知るようになったのは東日本大震災の後や東京オリンピック関係の話題が出てきた頃でしょう。

マンションなどの不動産を買いたい一般の取引希望者としては目先の提示価格が判断材料になるので建築費の動向のことまではなかなか考えることはないかも知れませんが、そのカラクリを知っておくともしかしたらお得な買い物ができるかもしれませんよ。

今回は不動産取引の裏側で建築コストがどう動いているのか、また販売価格との兼ね合いはどうなっているのかを見ていきます。

本当に建築費は高騰しているのか?

実際に建築費はどれくらい上昇しているのかというと、高騰前の建築費と現在の建築費を比べるとおよそ3割程度の上昇率となっています。3割と聞くとそれほどでもないように受け取る人もいるかもしれませんが、日用品と違って数千万円の三割ですからその差は非常に大きいものとなります。建築費が高騰してきた理由にはまず先の東日本大震災の影響があります。国土や建築物に多大な損失を被り、これを回復するために莫大な資材が必要になりました。

次に何かと話題に上る2020年の東京オリンピックが出てきます。五輪スタジアムとなる国立競技場の整備費の問題で一時マスコミにも大きく取り上げられていましたが、ただでさえ震災の影響で資材高騰の折、大規模な建築や建設整備に必要な資材の確保が必要になりました。オリンピック関係では国立競技場の整備だけでなく、東京都内の至る所でオリンピックを円滑に実行できるようにするため、様々な改修や工事を行うなど大改造が進んでいます。これら各所で必要になる建築資材が莫大な量となるため、価格が高騰してしまったのです。

直近では築地市場の豊洲移転問題なども浮上し、こういった局所的なものも地味に資材高騰の一因を担ってくることになるでしょう。

また建築資材の他にも目を逸らせない要因があります。それは労務費の問題です。資材があっても建築にかかる人員がいなければ何もできません。震災復興のために相当の人員が必要になったのはもちろん、オリンピック関係でも需要が急増し、さらなる人員不足を招いています。大きな建築・建設施工には経験を積んだ多数の熟練工が絶対に必要ですが、こうした人材はすぐに育成することができないので、各地で人材不足が起き、これも建築費高騰の大きな要因となっているのです。

 

こうした事情が積み重なり確実に建築費は上昇してきているのですが、実際のマンション販売の現状を見てみると、どうも上のような事態を反映していないように思われる方もいらっしゃると思います。マンションなど高額な物件の値段が3

割も上がってしまうと販売価格に転嫁されて相当大変な問題となっているはずなのにどうもそうではないようなのです。

マンションの販売価格がそれほど上がらないのはなぜ?

資材不足や労務費の問題による建築費の高騰を受けて、実際にはマンションの価格は上昇傾向にあることは確かです。

特に都心部ではその傾向が強く出ているのですが、建築費の高騰分をそのまま販売価格に転嫁されているわけではなく、建築費高騰分に比すると販売価格の上昇率は相当抑えられているように見えます。また都心以外の地方のマンションにおいてはその傾向がより強く、価格の上昇率はより小さく抑えられているようです。高騰分の負担を価格にそのまま転嫁できないのは、購入層のお財布事情が関係するからです。

数千万円の買い物で3割も値段が上昇することは購入をあきらめる決定材料となってしまいます。3,500万円のマンションであれば3割増で4,550万円ですから1,000万円以上の価格上昇となります。給与生活者は毎月の収入額が決まっているので、その額を軸にして導かれる予算には限度があり、それを超えると生活を圧迫するためこれだけの負担増があると購入をあきらめてしまうのは必定です。

そのため販売側は安易に価格に負担を転嫁できないのですが、ではその負担をどのようにして吸収しているのでしょうか?

価格上昇を避けるための販売各社の工夫

販売価格に転嫁できないということは企業努力で何とかするしかないわけですが、数百万円、数千万円レベルの負担を企業努力でどうにかするのは大変なことです。利益圧縮をできるだけ避けるためにはどうすれば良いかを考えると、まずはコストダウンのために建築材料のグレードを下げることになるでしょう。

販売側としてはお客さんには気づかれないようにどうやってコストを下げるかがカギとなるので、見た目にはできるだけチープ感を出さず、見えない箇所でコストダウンを図るのが常道です。従って材質のグレードを下げるのはもちろん、例えば壁の厚さなども薄くして材料費の圧縮を図ります。ただこういった工夫は建築費高騰とは関係なく普段から行っていることですのでさらにそこからのコスト減はなかなか厳しく、負担を吸収できるほどのコスト減は不可能です。

そこで大幅な利益確保を生みだすために考えたのが建築上のデッドスペースの活用です。

従来のマンションでは共用廊下から専用部分の入り口までに構造的な窪みを設け(「アルコーブ」と言います)、プライバシーの確保や安全性の向上、あるいは見た目の高級感を演出していました。各戸に配置されたこのデッドスペースをなくし、その分を統合して専用区画として住居化し販売することで売上増が実現できます。

また一般にマンションでは専有区画における住居スペースが広いほどに値段も上がり購入者にも好まれる傾向にあるので、ベランダ部分を削って住居スペースを広く取り、価格を上げて利益を確保しようとすることもあります。

このように、購入者側が気付きにくい、あまり気にされない部分に狙いを定めてコスト減を図り、価格転嫁できない分を吸収しようと努力しているのです。

建築費が安い時期のマンションはお得かも?

前項でお話したように、建築費高騰分は購入者の目に見えずらいところで材質や構造のグレードを下げていくことになります。

建築費が高騰する前の物件ではそうした工夫はされていないので、購入者の立場から見ると、中古マンションを買う場合に同じ値段であれば建築費高騰前の物件の方がコスト削減されていない分優良な物件と見ることもできますね。建築費が最も安かったのは平成21年から平成22年ごろですから、物件探しで同じ値段で複数の検討物件があり、その中にこの年代の物件があれば特に注視してみることをお勧めします。ただ老築度合いなど他にも見比べる点は多くあるので建築時期だけにこだわる必要はありません。

まとめ

今回は建築費高騰の実情とマンションの売買取引への影響を見てみました。

震災やオリンピック整備のため資材の需要が急激に増したことや人材不足による労務費の上昇を受けて三割ほどの費用増となっているものの、購入者側の予算の縛りから高騰分の負担を価格に転嫁しづらいということが分かりました。そして物件には多少の値上がりはあるものの、多くの負担は販売各社が工夫してコスト減を図っていることも分かりました。

これを踏まえて、購入する側としてはどのような個所でコスト減が図られているのかを理解したうえで売買取引に臨む必要が出てくるでしょう。



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