access_time2017年8月4日 更新

密かに検討されている世帯課税方式とは!?マンション売買に影響は出るのか?

密かに検討されている世帯課税方式とは!?マンション売買に影響は出るのか?

世界でも稀にみる複雑な税体系を持つ我が国では多くの名目で税金が徴収されています。

私たちの国の運営のための資金源となるものですから正しい目的の徴税には文句は言えないのですが、お給料明細で所得税がかなり引かれているのを見た時にモヤモヤした感があることも否めないのが事実でしょう。お給料など汗水たらして働いて得た収入の一部はこのように「所得税」として納めることになるのですが、実は今この所得税の税体系を抜本から変えようとする動きがあることをご存知でしょうか?

今密かに検討されている新たな税体系は「世帯課税方式」と呼ばれるもので、これまでの所得税のシステムとは一線を画すものです。

今回はこの新しい課税方式の正体を探り、マンション売買への影響が出るかどうか考えてみます。

現行の所得税のシステムはどうなっている?

新方式の前にまず現行の所得税のシステムをざっと確認します。

我が国の現行の所得税は「累進課税方式」と呼ばれるもので、納税者個人が課税単位となり基本的には収入が大きくなるほど所得税の額も大きくなるように設計されています。消費税のように皆一律ではなく、富める者はその分多くの税金を納めるように設計されているわけです。

例えば所得税の課税対象になる収入(課税所得)が195万円以下の場合は税率は5%と低いのに対して、課税所得が4,000万円を超える高額所得者は45%もの高税率が課せられます。

これは富の再分配を意識して、税金を通して貧しい者にも国策によって利益がいきわたるようにし、国全体で国民同士がお互いに支え合おうという理念から来るものです。この理念は立派なものですが、近年の我が国の事情としては少子化が大きな問題となっています。

そこで税体系の側面からこれに対処するために、家族が増えると所得税の負担も減るようなシステムにして少子化を抑制することができないかということで考えられたのが「世帯課税方式」なのです。

世帯課税方式はどんなシステムか?

世帯課税方式はすでに海外で導入されているシステムで、特に我が国と同じく少子化が進んでいたフランスではこのシステムの導入によって少子化の歯止めに一定の効果があったことが報告されています。これを受けて、同じく少子化の問題を抱えるわが国でも利用できないかと、与党自民党の有志によって検討対象に上げられたのです。これまでの所得税のシステムは個人の収入に対して課税されるもので、夫なら夫の収入、妻なら妻の収入が課税対象となり、そこには「家族」という集団には基本的には着眼していません。

個人の収入に課税されるということでシンプルであるのは良いのですが、子どもが増えて家族が増えてもそのことはあまり考慮されず(扶養控除などについては後述します)、一律に決まった課税がなされてしまいます。少子化対策としては子供が増えるだけ税負担を軽減することで「もう一人子どもを作ろうか」という決断の後押しをしたいわけです。

世帯課税方式ではこの点に着眼しているのが特徴で、まず世帯全体の課税所得を家族の人数で割ります。すると1人分で計算するよりも当然課税所得の数字が小さくなります。その小さくなった数字に対応する、より低い税率を適用して1人当たりの所得税を計算します。その後で、その数字に家族の人数を乗ずることで世帯全体の課税額が算出されます。

なかなか面白いシステムですが、次の項でどれくらいの税負担が軽減されるのかシミュレーションしてみましょう。

世帯課税方式でどれくらいの負担が減る?

計算を分かりやすくするために各種控除制度は無視して単純に計算してみます。

旦那さん、専業主婦の奥さん、子どもが2人いる4人家庭で、旦那さんの収入から割り出される課税所得金額が1,000万円だとしましょう。

現行のシステムではこれに対する税率は33%ですから、330万円の税額となります。

これを世帯課税方式で計算すると、まず課税対象の1,000万円を家族の人数で割ります。

1,000万円÷4=250万円となります。

税率はこの数字に対応する率である10%が適用されるので250万円の10%で1人当たりの負担額が25万円と算出されます。これに家族の人数分をかけると25万円×4=100万円がその世帯の所得税額となります。

現行のシステムによる計算額と比べると330万円-110万円=230万円も税負担が軽減することになります。年間でこれだけのお金が浮くことになれば「もう一人こどもを作ってもいいかな」と思わせることができるかもしれませんね。

単純に世帯課税方式のシステムだけを見ると確かに人数の多い世帯では数字上のメリットがありそうですが、実際はそう簡単にはいかないという指摘も多いのです。

各種控除が減らされる!?

上の項で、現行の所得税システムでは単純な個人課税で家族という集団に基本的には着眼していないとお話しましたが、実際は各種控除制度を加えることで調整がなされています。

例えば配偶者控除や扶養控除など、一定の条件に当てはまる場合は個人課税であってもそこから一定の負担を軽減することができるようになっています。これは家族という集団を考慮できない現行の制度に対しての手当や補正の作用があるものですが、世帯課税方式では最初から家族の人数に着眼しているため、このような手当や補正は不要になるため廃止されることになるでしょう。また世帯課税方式を実際に採用する場合は現行の税率を変更する作業も必要になるでしょうから、単純に今の税率で計算するような数字にはならなくなります。

さらに、世帯課税方式では夫婦共働きの場合妻の収入も合算されて世帯課税されてしまうので専業主婦の方がお得と考えられてしまうかもしれません。これは女性の労働力を社会で活用したい国の思惑と逆の効果を生んでしまうかもしれません。また負担が減じられる分が必ずしも子どもを増やすことに用いられるわけではなく、単に趣味などに回されることも考えられます。子どもを増やすのではなく、両親と暮らすことで減税の効果を得ようとする世帯も出てくるでしょう。

こうした様々な懸念事項があり、単純に世帯課税方式を採用すれば少子化が解決されるから良いのだという結論には至らないのです。

マンション売買への影響は?

色々とみてきましたが、マンション売買への影響はあるのでしょうか。

マーケット的に考えると、世帯課税方式が採用され、これが功を奏し大家族が増えてきたと仮定した場合、大所帯用のマンションの需要が増えることが予想されます。新築マンションもファミリー世帯用の物件が増え、中古のファミリー物件も人気が出るでしょう。一方単身者用や夫婦2人などDINKS用のマンションは需要が減り値を下げるかもしれません。

ただ他にも言えることですが、税制の変更や改定だけで世情に与えられる影響はそう大きくなく、その度合いは未知数です。

今後世帯課税方式がどのように議論されるのか、これに連動して少子化歯止めの為にどんな施策を打ってくるのかを見守りたいところです。

まとめ

今回はまだあまり国民に知られていない所得税の新システム「世帯課税方式」について見てきました。

まだ初期の検討段階で実際に導入されるかどうかも分かりませんが、国としては少子化をなんとか食い止めたいという事情があるので、有効な手は検討してみたいのが本音であると思われます。税制も含め制度が変わるたびに私たち国民は翻弄されますが、変わっていく情勢には上手く対応していくしかありません。その意味ではこうした将来に影響が出そうな施策の情報を普段から収集しておくことは意義があります。

特にマンション投資を考えている方にとっては投資先のベクトルを考えるきっかけにもなるので最新の情報に敏感でいたいものですね。



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