家族名義のマンションの売却の注意事項

access_time2017年6月27日 更新

家族名義の不動産はこうやって売却しよう

家族名義の不動産はこうやって売却しよう

家族は日常生活で環境を共有しており、一般的には強固な信頼関係で結ばれた存在です。様々な場面でお互いに助け合いながら、必要とあれば家族の代わりに他の者が代理で物事を処理するなどということは普通にあることです。

しかし、これが契約事となるとちょっと事情が変わってきます。利害が絡む契約は当事者となる相手方の権利利益にも関係してきますし、それだけでなく当事者を取り巻く第三者の権利利益にまでも派生します。

こと不動産の取引に関しては相当多額のお金が動くことになるので、取引の安全性の担保については他の取引とは比べものにならないくらいの重要性を帯びてきます。そのため、その不動産の真の所有者が誰であるのか、そしてその真の所有者に売却の意思があることをどのようにして確認するのかという点が契約上で最も重視されます。

こうなると家族が代わって契約などというのは難しくなるのはすぐに分かりますが、世の中にはどうしても避けられない事情で所有者本人による売却活動ができないことがあるのも事実です。

こうした時にどのように対処すれば良いのかが今日のテーマです。

所有者本人が忙しいので家族が代理で売却する場合

例えば実業家である父親が不動産を売却したいけれども、仕事が忙しく時間が取れないなどという場合、その子などが売却に向けて動くということがあります。その場合、真の所有者である父親に確かに売却の意思があり、その意思に基づいて子が売却の手続きを代わりに行うことが許されているということを証明しなければなりません。これが担保されないと買い手側は本当に取引しても大丈夫なのか不安になります。

世の中には不仲な家族はいくらでもいるので、家族の不動産を勝手に売却しようとする輩もいる可能性があるからです。そのようなケースではお金を払って購入したにも関わらず、その不動産について権利を主張することができなくなる恐れもあります。

ですから買い手としてはこの点を担保する必要があるのです。

このケースで確かに真の所有者の意思であることを確認するには以下のようなものが必要になります。

・所有者名義人作成の委任状

不動産の売買についての実務を代わりに行わせる代理権限を付与した文言と、受任者の名前などの必要事項を記載します。委任状の作成については注意が必要ですので必要に応じて専門家に相談すると安全です。

・所有者名義人の身分証明書と印鑑証明書

所有者名義人が確かにその意思に基づいて作成した委任状だということを担保するために、委任者(所有者名義人)の身分証明書や印鑑証明書が必要です。

・受任者の本人確認書類

受任者となる子についても本人確認しなければなりませんので、受任者の身分証明書や父親の子であることを証明する戸籍謄本などが求められます。

 

なお不動産を登記する場面では、法務局の登記官は必要に応じてさらに所有者名義人に事実確認を取るため事情を聞いたり、出頭を要請するなどの措置を講ずることができるとされています。

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認知症などで判断能力が落ち所有名義人の意思が確認できない場合

代理人による売却手続きはあくまで所有者の意思が確認できるケースに限られます。しかし、認知症や病気などで本人の正確な意思が確認できないようなケースでは代理人の手段は利用できません。

代理ではあくまで本人の意思で委任を受けなければならず、その意思が不正確な場合は適正な委任ができないからです。そのため認知症などで本人の判断能力が落ち、正確な意思が確認できないようなケースでは別の方法を用いなければなりません。

まず、判断能力が落ちた者の後見人となるために、子などが家庭裁判所に成年後見制度開始の審判の申立てを行います。医師が本人の意思能力や判断能力などを鑑定して成年後見についての評価を行い、後見制度開始が妥当と裁判所が判断すれば後見開始の審判がなされます。所用期間としては大よそ3か月~5か月ほどかかります。

ただしこれだけでは不十分で、さらに居住用不動産の売却について家庭裁判所からの許可をもらわなければ売却することはできません。家の売却が子の利益の為ではなく、父親の利益のためだということを家庭裁判所に納得してもらわなければならないので、例えば老人ホームに入居する費用に充てるなどの真っ当な事情が無ければ許可が出ません。

そのため、少し面倒ですが許可申請の前には買い手との売買取引についてしっかりと話を詰め、売買契約を締結しておかなければなりません。その契約書の中身から売却の妥当性を裁判所が判断することになるからです。裁判所の許可なしに締結された契約は無効となり、許可が出た後に従前とは異なる内容の契約内容に変更することはできません。

この点、買い手側にこのことを了承してもらう必要があるので契約上のハードルが多少上がってしまうことも予想されます。

事前に名義変更する場合

委任状を作成したり本人確認の書類を準備したり、はたまた成年後見制度の利用や家庭裁判所の許可などとなるとかなりの大事だと考える方も多いと思います。そこで、そのような面倒を回避するために事前に名義を変えてしまえば良いのでは?と思われるかもしれませんね。

今回のケースでは父親から子に所有権を移して名義変更してしまえば、後は子が真の所有者として何の制限もなく取引ができそうです。しかしこの場合、今度は税金など金銭的に不利益を受けてしまうことがあるので慎重に行う必要があります。

まず、家族だからと不動産を無償で譲渡する行為は「贈与」にあたるので、贈与を受けた子に対して贈与税が課税されてしまいます。基本的に年間110万円を超える贈与に課税されてしまうので、額が大きい不動産はほとんどが課税対象になってしまいます。

贈与税の税率は高く、最低でも10%、最高の税率では55%もの税率がかかってしまいます。相続時精算課税制度などの税制上の施策を使って税額を減らしたり、納税を先送りすることができますが、後々負担が巡ってくるリスクがあるなど利用には注意が必要ですから気軽に用いられる制度ではありません。

またこの他に不動産取得税や登録免許税などの各種税金もかかります。

結局、名義変更にかける手間やリスク、金銭的な出費を考えると、家族への名義変更による方法は選択肢に入ることはあまりありません。

 

では贈与ではなく「売買取引」に見せかけるのはどうでしょうか。

これであれば贈与税はかからないように思えますが、売買取引の場合は売り手側の売却益には不動産譲渡所得税が課税されてしまいます。

この税率も高いので(不動産の所有期間によって20%または39%)避けたいところです。

 

では親子間ということで安く譲渡すれば譲渡所得税も安くなるのでは?と考えますが、このような取引は実質は譲渡行為であるとみなされて、贈与税の課税対象にされてしまいます。

こちらもやはり手間とリスクを考えれば検討されるケースは少ないでしょう。

まとめ

今回は家族がマンションなどの不動産を売却する時の注意点について見てきましたが、面倒だからと名義を家族に移してから売却することはデメリットの方が大きくなることが多いので注意が必要です。

所有者が単に忙しいなどのケースでは正攻法として委任状を用いるのがベストでしょう。

もし認知症などで判断能力が落ちてしまった場合は手間と時間がかかってしまいますが、家庭裁判所を通して適正な手続きを取るようにしましょう。



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