access_time2018年7月15日 更新
元金返済や減価償却費は経費になる?

元金返済は経費にできると思っている方はいませんか?「毎月多額のお金を返済しているのだから当たり前でしょう」と考えている方も多いでしょう。しかし、実はこのように経費になると思っていたものの実際は経費にならなかったというものはたくさんあります。今回の記事でご紹介するデッドクロスにならないようにするには、元金返済と減価償却費の関係が大切だと考えられています。今回はデッドクロスという問題にかかわる「減価償却費」と「元金返済」の関係や経費について詳しく紹介していきます。
元金返済は経費になる?
銀行から融資を受けている方は、毎月多額のお金を返済している方も多いでしょう。不動産投資のために借り入れた借入金を返済しているのだから、経費になるだろうと思っている方もいるかもしれません。結果から先にいうと、元金返済は経費にすることができません。ではなぜ元金返済は経費にできないのかということについて説明していきます。
まず銀行の返済方法について紹介します。返済方法には「元利金等返済方式」と「元金均等返済方式」の2種類あります。
「元利金等返済方式」とは毎月の返済額を一定にする方法です。住宅ローンなどによく使われる方法です。ローンを支払い終えるまで返済額が同じなので、元金がなかなか減らないのが特徴です。
一方「元金均等返済方式」とは毎月の元金返済の金額を同額にする方法です。最初の頃は利息が多いため、合計額が多くなりますが、年々返済額が減っていきます。支払う利息は元金均等返済の方が少なくなるという特徴があります。このような2つの方法で元金返済をおこなわれています。
先ほど紹介したように、元金返済は経費にすることができないということがわかりました。なぜならば、最初に銀行でお金を借りた段階で経費にしているからです。例えば、マンションのキッチンが古くなったので取り換えるために、500万円借りたとします。その500万円を使ってキッチンを修理しました。賃貸物件の修繕のために500万円使ったのでこの時点で経費にします。すなわち、キッチンを修繕するためにお金を借りて支払いをした段階で経費にしているのです。だから、元金返済を経費にすると2重計上になるため毎月の支払いを経費にすることができないのです。
一方借入金の利息は経費にすることができます。しかし、元金均等返済方式を利用している場合は、年々利息は減っていきます。逆に、元金はずっと同じ金額なので申告する所得が多くなり、黒字倒産という現象がおきてしまいます。
減価償却費は経費になる?
建物は年数が経てば毎年価値が下がっていきます。例えば10年後に建物を売却する場合、建物の価値は下がり、購入した当初より低い金額で売却されます。今回の不動産投資における減価償却費とは、建物を購入したときに一括で計上せず、毎年少しずつ経費計上できます。
よって、減価償却費は経費にすることができます。手元のお金は減りませんが経費にすることができるので節税効果が期待できます。
この減価償却費には法律で定められた法定耐用年数に応じて決められています。不動産の場合は、用途や構造により変わります。例えば、木造・鉄筋コンクリート造などによっても異なります。建物付属設備も同じです。例えば、電気設備・給排水・衛生設備などによって異なります。
・建物
木造・合成樹脂 | 事務所用 | 24年 |
店舗用・住宅用 | 22年 | |
木骨モルタル造 | 事務所用 | 22年 |
店舗用・住宅用 | 20年 | |
鉄骨鉄筋コンクリート造・鉄筋コンクリート造 | 事務所用 | 50年 |
住宅用 | 47年 | |
れんが造・石造・ブロック造 | 事務所用 | 41年 |
店舗用・住宅用 | 38年 | |
金属造 | 事務所用(骨格材の肉厚が4mm超える) | 38年 |
店舗用・住宅用(4mm超える) | 34年 |
・建物付属設備
アーケード・日よけ設備 | 金属製 | 15年 |
電気設備(照明設備含む) | 蓄電池電源設備 | 6年 |
その他 | 15年 | |
給排水・衛生設備・ガス設備 | 15年 |
減価償却の計算には2種類の方法がある
減価償却費を計算するためには、「定額法」「定率法」の2種類があります。建物本体は定額法しか選択できません。一方建物付属設備は定額法・定率法どちらも選択できます。
・定額法
定額法の特徴は毎年減価償却費が同額になることです。取得価額に定額法の償却率をかけると減価償却費を計算することができます。償却率は、国税庁のホームページで確認することができます。
・定率法
定率法の特徴は、減価償却費の額は初年度ほど多くなり、年々減少していくことです。未償却残高に定率法の償却率をかけると減価償却費を計算することができます。未償却残高とは、取得金額からこれまでに償却した合計額を引いた金額です。
減価償却費はデッドクロスにも大きく関わっていきます。定額法は毎年同じ金額で計算されますが、定率法は年々減っていきます。将来に備えてどれくらい減価償却費が経費にできるなど計算しておくことが大切です。
注意しておきたいデッドクロスとは
経費にできる減価償却費は年々減っていきます。また「元利金等返済方式」で借入金の返済を行っている場合は、返済金額が年々増えていくため、手元のお金が少なくなるということが起きます。また、経費として計上できる減価償却費も年々少なくなるため、節税効果が少なくなり税金も増えていきます。そのため、手元に残るお金よりも税金の額が多くなり支払いができなくなるといったケースがあります。これをデッドクロスといいます。
なぜこのような現象が起きるのかというと、不動産を購入した当初にこのような現象を予想していないということが考えられます。デッドクロスを解消するにはいろいろな方法がありますが、まずは不動産を購入する前に将来に備えて十分資金を準備しておくことが一番の対策となります。ローン返済が長くなるとさらにデッドクロスのリスクが高くなるので十分に注意しておきましょう。
デッドクロスを回避する方法は?
このようなデッドクロスを回避するためには、銀行からお金を借りた時点で計画的に対処することが必要です。デッドクロスになる可能性が高いのは、フルローンをしている・借入金が多い・元利均等返済を利用しているなどです。このデッドクロスを回避するには具体的には以下のようなものがあげられます。
・自己資金を増やす
・元金等返済方式を利用する
・繰り上げ返済をする
・返済期間を延ばす
・物件を売却する
・新しい物件を購入する
これらの項目から考えると、借入金が多いほどデッドクロスは増えてしまいます。一番わかりやすいことですが、不動産を購入する前にできるだけ多くのお金を用意しておくことです。最初の頃は順調に支払いがおこなわれていても、将来どのようなトラブルが起きるかわかりません。そのためにも、十分にお金を準備しておくことが必要となるでしょう。
元金返済と減価償却費についてもう一度確認を
不動産投資の中で一番大切なのは、手元にどれくらいのお金が残るかということです。実際のキャッシュフローよりも税金が高くなるという現象が起きることを考えておくことが必要です。また、不動産投資はうまくいっているのに、税金が払えなくなるというデッドクロスが発生することもあります。このようなリスクを減らすためにも、自己資金を増やすということが一番の対策となるでしょう。また、実際に不動産投資を始めた後でもデッドクロスを解消する方法はあります。詳しいことは不動産投資を始めるまえに、不動産投資の専門家に相談しておきましょう。