access_time2017年8月1日 更新

中古住宅市場はなぜ活性化しない?空き物件急増の背景を探る!

中古住宅市場はなぜ活性化しない?空き物件急増の背景を探る!

近年、私たちの日常生活には家電や日用品などのリサイクル市場が深く浸透してきましたね。店頭で取引するスタイルだけでなく郵送でのやり取りで取引されるケースも一般的になりました。バブル期の「消費は美徳」の意識は薄れ、古いものにも価値を認める時代となりました。

ところが我が国の不動産市場においては、なぜか中古物件についてあまり価値を認めず、短期間での急激に価値が低下するなど不自然な評価を受けます。そのせいもあってか、海外ほど活発な取引がされていないのが現状です。現在ではマンションの空洞化や空き家による様々な危険が懸念されるなど問題化するまでになってしまいました。

今回は我が国でなぜ中古不動産市場が活性化しないのか、その背景を探ってみます。

日本と海外とでは何が違うのか?

我が国の中古不動産の取引は住宅全体の供給量の中で36.7%ほどにとどまり、海外に比べて相当低い数値となっています。

イギリスの88.8%、アメリカの77.6%という数字に比べるとその差に驚きを覚えます。なぜここまで差が出てしまうのか、そこにはまずその国を取り巻く風土や文化、そして建築材料の要素があります。

日本では古くから木材をメインにした木造家屋が一般的でしたが、海外では石造りの家屋が多く、建築具材の耐久性の点でまず明らかな違いがありました。当然木造は朽ちるのが早いので価値の低下が早くなるということは仕方がない面もあるでしょう。老築感がある物件はやはり色々な欠陥も出て当然、従ってあまり人気が出ないというのも自然に思えます。

このため海外では何代にも渡ってオーナーが代わりながら活用されるのに対し、日本では中古物件の取引が途切れ、空き家となってしまうことも多かったのです。しかし、近年は国内でも耐久性のある建築具材や強度を高める工法が開発され、上記のような要素の影響は下がっています。

それでもなぜ中古物件の人気が出ないのか、それは不動産の取引には適切でない評価の指標が存在することも関係します。

適切でない価値の指標「耐用年数」の問題

国内には現在でも「新築物件信仰」が根強く残っています。「中古はダメ」「新築なら間違いがない」、こうした考えが根強く残っているのは家屋の価値が短期間で激減してしまうためです。新築から10年で約半分、20年も経てば価値はゼロと評価されてしまうこともしばしばです。そのため土地にしか価値を認めない「土地本位制」などという言葉も生まれました。

建築具材が改良されているのになぜこれほど早く価値が減少してしまうのでしょうか?

その一因は税務処理において減価償却費の算定の為に用いられる「耐用年数」という指標が不適切に利用されることが挙げられます。

減価償却とは一定期間のあいだ建物の経費処理を認めて税務上の優遇を得るシステムですが、この取扱いでは建物について「一定期間経った建物は価値をなくして経費処理を認めない」とする時期が決まっています。建築具材や自己居住用か事業用かなどの用途によっても異なりますが、数十年でその価値を「0」にして経費処理を認めないこととするのです。国が決めたこの耐用年数はあくまでも税務処理のための便宜的な数字であって、しっかりメンテナンスした物件は数十年経っても十分に利用できる物件はたくさんあります。

それでも他に確かな指標がないのでこの耐用年数の概念が不適切に用いられることが多いため、短期間で価値が激減してしまうことになるのです。

新築信仰は国が誘導した!?国策の是非

日本人の新築信仰はもしかしたら国が主導したとも言えるかも知れません。

というのも、国は景気浮揚や経済成長の観点から新築家屋の建築や取得に対して様々な優遇施策を講じているからです。税制面だけでなく補助金も導入して新築物件の購入や取得を後押ししています。さらに、ここにメリットを感じるのが建設業界や金融機関です。

新築住宅を販売するデベロッパーなど建設業界は建物を建築し販売することで利益を得ていますから、市場で中古物件が幅を利かせると自分達の利益を邪魔してしまいます。金融機関は住宅ローンの貸付で利益を得ることができるので、やはり高額な新築物件を優遇したいのです。

そのため中古物件の評価を下げた方が都合が良いことから、前項で説明した耐用年数などの概念を担保設定の審査の際に用いたりして、中古物件を低く評価することになるのです。

こうした動きが良いことか悪いことかは意見が分かれるでしょうが、中古物件が本来の価値より低評価とされてしまう一因と考えることができるでしょう。

不動産業界の問題も

現在ではかなり改善されましたが、一昔前までは中古物件を取り扱う不動産業者はちょっと怪しげな雰囲気があった時代もありました。透明性が低く、外から見ると近寄りがたい存在だったのです。

今では業界の健全化を目指した様々な取り組みの結果かなりイメージは改善されましたが、やはり不動産という大きなお金が動く業界ですから利益追求の貪欲さはうかがえます。

なかでも問題視されているのが他社の介入を不当に阻止して自社の利益を確保する「囲い込み」の問題で、業界のルールには違反する行為ですが、一部の業者はなお行っていると言われています。

売却仲介の依頼者の利益を害し、中古物件の流動性を下げてしまうこの行為も中古物件市場の活性化促進を阻害する行為と考えて良いでしょう。

中古物件市場は今後どうなる?

これまで見てきたように多くの要因が絡んで日本の中古不動産の市場はまだまだ活発に行われているとは言えない状況です。ただこの状況のまま、あるいはもっと衰退するようなことはないだろうと考えます。

というのも国内の不動産を有効活用することは国の財産の有効活用でもあることから、中古物件についてもリフォーム費用の助成など援助施策を用意していますし、近年の空き家問題などに絡み、空き家対策法を整備して引き締めを図っています。

国としては景気浮揚の施策も重要ですから新築物件に対する優遇措置は継続するでしょうが、中古物件についても国内財産の有効利用の観点から施策を推進していくと思われます。

空き家対策法については中古市場の直接の活性化というわけではありませんが、規制強化による牽制作用から、持ち主に対して「放置するよりも活用しなければならない」と思わせる効果が期待できます。また中古物件の不安を軽減するために、住宅診断など安心して取引できるようにするシステムが色々導入されてきています。

こうした動きが前進することで少しずつ中古市場も活性化していくものと思われます。

まとめ

今回は我が国の中古不動産市場が諸外国に比べて活性化されない背景について色々見てきました。

そこには建築文化の違いや国内の法令などの施策の影響、あるいは各業界の思惑など諸処の事情が絡んでいるようです。ただ、諸般の事情が絡んでまだ未成熟ではあるものの、言い換えればまだまだ伸び代のある有望な市場ということもできます。

多くの不安材料はあるものの、総合的に考えれば中古市場を活性化させることについては国全体としてみても有益なものです。

私たち国民の感情的にも優良な中古物件であれば安く購入できることはありがたいわけですから、今後中古市場取引の安全性がどのように向上していくのか、興味を持って見守っていきたいものですね。



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