access_time2017年6月26日 更新
マンションの買い手にとって大切になる「重要事項説明書」って一体何?

街中で衣服や家電製品を購入するのと違い、不動産の売買は多額の金銭のやり取りが生じる取引です。
日用品であればトラブルがあってもお店に文句を言って新しい商品と交換してもらって一件落着できるかもしれませんが、金額が大きくなる不動産取引では例え小さなトラブルであっても、それが派生して取り返しのつかない大きな問題になってしまうこともあります。
こうした不動産取引を巡るトラブルは過去に実際多く起きており、これを防ぐために国は様々な法規制をかけています。
不動産取引では買い手が一般素人である場合に特に不利益を被ることが多く、これは不動産に関する知識に乏しいため、売買取引にあたって「どんな情報を知っておくべきなのか」「どんな点に注意したら良いのか」という着眼点すら持てないためです。
不動産取引ではこうした知識の乏しい一般の購入者の為に、取引対象となる不動産について購入者に対して伝えておかなければならない事項を国あらかじめが決めています。
その伝えるべき事項についてまとめられているのが「重要事項説明書」というわけです。
重要事項説明書はただ交付されるだけでは足りない
重要事項説明書は取引物件について購入者が必ず知っておかなければならないことについてまとめられていますが、その情報を文字で見ても一般の素人の方には直ちに理解することが難しい内容も含まれています。
そこでこの書面の交付の際には、取引を仲介する不動産業者に在籍している専門家が説明を加えなければならないことになっています。
説明する者は「宅地建物取引士」という資格を保有する者でなければならず、不動産業者は一定数の有資格者を必ず雇用しなければならないことになっています。説明を受ける際は必ずその社員の資格を確認するようにしてください。
また重要事項説明書にはその説明をする有資格者の名前、登録番号、事業所名の記載をする箇所があるので、その欄と照合して間違いがないかどうかのチェックも必要です。
では、次の項から実際の書面の中身について、どんなことが書かれているのか見ていきましょう。
記載事項その1:物件の基本情報について
取引対象となる不動産の基本的な情報を確認する欄ですが、下記のような情報が確認できます。
・物件の所在地等の情報
取引する不動産は確かな住所や地番によって確定されます。そのため、登記簿と違いの無い土地の所在地や面積、家屋については家屋番号、種類や構造なども記載されます。また売り主の氏名や住所も記載されます。
・物件にまつわる権利関係の情報
不動産は抵当権などの対象物になることがあるので、その物件について抵当権を持つ者がいないか、差押えを受けていないかという情報は後々重大なトラブルに発展する可能性があるので必ず説明がなされます。
記載事項その2:法令上の制限について
不動産にはその安全を確保したり乱開発などを抑制するためなどの目的で、国が都市開発法や建築基準法などの法令によって一定の規制がかけられることがあります。
例えば下記のようなものがありますが、規制がある場合はその内容について記載がなされます。
・都市計画法による制限事項
住宅地や商業地域などの地域区分などから制限される事項が記載されます。
・建築基準法
建物の大きさの限度や用途などについて建築基準法で規制される内容が記載されます。
・その他法令による制限
上記の法令以外に規制や制限がある物件の場合その内容が記載されます。
記載事項その3:私道やライフラインの設備について
物件に付随する私道や人が住む住宅として必要となるライフラインの事項について以下の記載がなされます。
・私道の権利関係
物件に私道が付いているか、付いている場合は位置や面積などの情報
・水道
公営水道・私道水道・井戸などの種類
・電気設備の有無
・ガス
都市ガス、プロパンガスのなどの種類
・排水設備
公共の下水設備、浄化槽などの種類
記載事項その4:その他物件に関する情報
その他物件についての情報が記載されます
・完成時の形状や構造など
建物がまだ未完成の場合には契約の時点では内部構造などがまだ分かりませんので、完成時に予定されている形状や構造などの概要が記載されます。
・造成宅地防災区域内か否か
造成された宅地のうち地震などの災害の被害を受けやすい造成宅地防災区域内の場合、防災のための一定の努力義務が課されます。
・災害警戒区域内か否か
津波や土砂災害など、地元の自治体が指定する災害が起きやすい地域内にあるかどうかの記載がなされます。同区域内の場合は建物の建築について一定の制限がかかります。
・アスベストの使用調査について
物件について売り主がアスベストの使用状況について調査をしている場合にはその内容が記載されます。
・耐震診断について
物件について耐震診断を行っている場合にはその旨と内容が記載されます。
・住宅性能評価について
建物の施行者など利害関係者とは一線を引いた中立的な立場となる「登録住宅性能評価機関」によって、公平な立場から建物の性能について客観的な評価を受けることができる住宅性能評価を受けている場合はその旨と評価書の交付状況が記載されます。
記載事項その5:マンションに関する特有の事項
マンションは自分だけが利用・使用できる専有部分だけでなく、廊下や階段など他の住人と共用しなければならない共用部分があるなど特有の事情があります。
そこには他人との利害がからむため、権利の範囲や制限などについての取決めが記載されます。
・敷地に関する権利について
敷地面積や所有権、借地権などの権利権原などについて記載されます。
・共用部分に関する規約について
共用部分については管理規約などに別途取決め事項の詳細が記載されますが、その概要についての記載がなされます。
・専有部分の用途について
専有部分について、住居以外の事務所などに使用することが禁止されたり、ペットの飼育などが禁止されるなど制限が出る場合に当該事項が記載されます。
・専用使用権について
駐車場やトランクルームなど特定の者に専用使用が認められるものについての記載がなされます。
・管理費や修繕積立金について
マンションの住民として求められる出費や経費に関する事項について記載されます。
・管理の委託先について
マンション管理を外部の機関に委託している場合にはその内容について記載があります。
記載事項その6:契約に関する内容
別途締結される売買取引契約書の内容のうち特に重要になる事項が記載されます。例えば以下のような内容があります。
・金銭の授受関係
物件自体の売買代金以外にも固定資産税の清算や未納管理費についての清算金、あるいは手付金などお金の授受に関する取り決め事項が記載されます。
・契約の解除について
トラブルの起きやすい契約の解除についての制限や手続き、手付金の扱いなどについての内容が記載されます。
・損害賠償額の予定や違約金について
契約当事者に契約違反があった時の損害賠償や違約金についての取決め内容が記載されます。
・手付金の保全措置について
売り主が不動産業者の場合で一定額以上の手付金を受け取る場合にとられる、業者側の倒産に備えた手付金の保全措置について記載がなされます。
・預り金や支払金の保全措置
不動産業者が預かった手付金以外の金銭にかかる保全措置についての内容が記載されます。
記載事項その7:その他重要事項
その他取引に関して以下のような事項が記載されます。
・住宅ローンのあっせんについて
ローンのあっせんを受けた場合のその内容や、ローンの実行が不可となった場合の措置等
・瑕疵担保責任の履行に関して
業者の倒産などに備えた保険加入など瑕疵担保責任の履行に関する事項
・分割払いに関する支払い時期や金額などの事項
・不動産業者に義務づけられる、消費者保護のための供託金や保証協会への加入についての事項
このように、「重要事項説明書」には契約や契約したその後に関する重要な内容がたくさん盛り込まれています。サインをする前にしっかりと読み、不明点がない状態で契約することが望ましいですね。